泣いて、凪いで、泣かないで。

1人で歩いていると、やはりよぎる。

汐衣愛といると自然と消えてなくなったのに、再び戻ってしまった。

生ぬるい風が気持ち悪くてイライラを増幅させる。

風が凪げばいい。

早くこの風が凪げばいい。

俺の心で吹く突風が、凪いでくれればそれでいい。

俺は風に吹かれ、波打つ海岸を横目で見ながら夜道を歩き、家を目指した。

疲れたし、早く寝よう。

寝て忘れたいことだってある。

もう9時を回っている。

さすがに結月は風呂からあがっているだろう。

そしたら、俺の番だ。

とっとと入って寝る。

寝てやる。

そう心に誓った、その時だった。

俺の視界にある生命体が入り込んできた。

電柱に寄りかかり、今そこから離れようとしている。


「美凪?」