泣いて、凪いで、泣かないで。

「汐衣愛」

「ん?」

「今、楽しいか?」

「うんっ!だって、花火すごいもん!ほら、音楽もノリノリだしぃ。すっごくワクワクしてるよぉ!」

「そっか。良かった」


と、俺が言うと、汐衣愛が俺の手に自分の指を絡ませてきた。


「汐衣愛...」

「ゆっととこうしてると、もっと楽しいし、嬉しいし、幸せだよ」


汐衣愛の手から感じる熱はほのかに温かくて、骨の髄に染み入る温度だった。

その温もりの優しさに、俺は心を預けた。

ありがとう。

こんなめちゃくちゃな、どうしようもない俺の側にいてくれて...

笑ってくれて...

ありがとな、汐衣愛。

そう思いながら胸に響く花火の音を聞いていた。