泣いて、凪いで、泣かないで。

「結月の入学を祝って...かんぱーい!」

『かんぱーい!』


その言葉の後は、ゆっとも煌人くんも食べるのに夢中で、大量に作ったはずの唐揚げもミートローフもミモザサラダも野菜スープもあっという間に半分近くなくなった。


「ゆっと、食べ過ぎだよぉ」

「お祝いなんだからいいじゃん」

「主役より張り切って食べるなんて、信じらんない。配慮がたりませんわよぉ」

「んだよ、その喋り方?!俺をバカにするとこーなるぞ!」


ゆっとはしーちゃんの頬を片手で挟み込む。


「うわぁ!やめてよぉ」


こんなにも仲良しな2人を見て、やっぱり切なくなってしまう。

しーちゃんのポジションに自分がいたいと思ってしまう。

私はさりげなく席を立ち、食べ終わった皿を取って洗い場に持っていった。

本当は、私だって......

私だって......

ゆっとに触れたい。

ゆっとに触れてほしい。

その笑顔を私のものだけにしたい。

そう、思ってるんだよ。

本当は、私の想いに気づいてほしい。

そう思ってて、言えないんだよ。

それを......分かってほしい。

いつか、気づいてほしい。

なんて、願ってしまうのは、

きっと、罪、なんだよね。

スポンジに泡をつけ、ゴシゴシと自分の心も洗い流すかのように、力を込めて皿を洗った。

でも、私の気持ちは洗い流すことなんて出来なかった。

そんなの、始めから分かっていた。