泣いて、凪いで、泣かないで。

「お待たせ!帰ろっか」

「うん」


なっちゃんは近づくとふわっとフローラルな良い香りが漂う。

気品があって女性らしい香りに女子の私までキュンとしてしまう。


「そっちはどう?」

「去年と変わらないよ。2人は仲良くやってるみたいだし、私も私で無難にやってる」

「無難に、か」

「うん。良くも悪くも変わらないよ。3年になったからって何も変わらない」


昇降口にやって来て、下駄箱から自分のローファーを取り出す。

下駄箱に手紙を入れるとかやってみたかったなぁと、3年になって後悔してしまう。

青春たるものを未だに味わっていない。

私の青春はきっとあの4ヶ月で終わったんだ......。

2人ともローファーに履き替え、昇降口を出て校庭を見ながら校門まで来て、桜並木に差し掛かる。

桜を見ると、あの春の、あの淡い気持ちが甦ってきて、胸が一瞬シュンとしてシューッと萎んでいくように感じる。