泣いて、凪いで、泣かないで。

「ねぇ、ゆっと。ここ分かる?ゆっと数学得意だよね?」


美凪が振り返って俺を見つめてくる。

異様なほどに脈が速くなる。


「いや、別に得意じゃ...」

「へぇ、数学得意なんだぁ!羨ましいなぁ」


なんだよ、このわざとらしい言い方。

煽ってんのか。


「鳴海くん、教えて。オレ、このままじゃ、また追試になっちゃうんだよ」

「そんなの知るかよ。自分で考えろ」


俺がそう言うと、


「ゆっとぉ、冷たいぞぉ!」


と、汐衣愛まで参戦してきた。


「教えてあげなよぉ。じゃないと、今日のお昼、しーとみーちゃんと波田野くんに定食奢ってもらうからね!」

「おぉ、それいいかも」

「でっしょぉ!」


ったく、もう、最悪だ。


「分かった。教えるよ。答え見せろ」

「答え?」

「間違ったこと教えたら困るだろ」

「答え見たらさすがにわかるでしょぉ?ねぇ?」

「いやぁ、それがぁ、分かんないんだぁ」

「そうなの?じゃ、いっかぁ。答え見っちゃお!どれどれぇ?」


マイペース2人の世話は地獄だ。

誰か助けてくれ。