泣いて、凪いで、泣かないで。

おばさんは底抜けに明るい人だ。

それは引っ越しの挨拶の時からで、すごいハイテンションな人が引っ越してきたものだと圧倒されたのを今でも覚えている。

夫になるはずだった研修医と別れ、たった1人で子供を育てることを選んだだけあって、ものすごいパワフルでポジティブで明るい。

そんな母親のもと育てられた美凪も1人で生きていこうと躍起になっている。

本当はそんな状況が少し悲しい。

だから、俺はこうやって自分から美凪の元に駆け寄ってしまうのだろう。

目覚めて話して分かったことだ。

スーパーのレジ袋に入れられた品々を見る。

美凪が作った肉じゃがは、俺が人参嫌いということを考慮して、いつもすりおろしになって入っている。

それを見て鼻の奥がつんとしたのは、気がつかなかったことにしようと思う。