泣いて、凪いで、泣かないで。

「ゆっと......」


美凪が口を開いた。


「何だよ」


口を動かして何かをぶつぶつ話しているのは分かるが、内容が聞き取れない。

寝言だから仕方のないことだ。


「わりぃ。俺も眠いから寝させてもらう。隣借りるな」


美凪に布団を被せ、俺は2メートルくらい離れて横になった。

眠って目が覚めた時には、このどうしようもない気持ちの正体が分かるだろうか。

分かっていてほしい。

俺が壊れてしまう前に、知りたい。

そんなことを思いながら目を閉じた。

瞼の裏に汐衣愛の顔がちらついたのが分かって俺は安心して眠りについた。