泣いて、凪いで、泣かないで。

俺は思い出していた。

昔、美凪が雷が怖くて俺の家にずぶ濡れになってやって来たことを。

俺にしがみついて泣き叫んで、年下の結月に慰められていた。

お化け屋敷に入ったときなんかも、夏綺もわりと震えていたが、美凪が1番怖がっていた。

美凪は1番怖がりで、なのに誰にも頼ろうとしない。

いや、頼れないのか。

今は、そう、

俺が自分のものじゃないって分かってるから。

だから、何も

何も言ってこないんだ。

3年前は、

3年前だったら、

3年前の関係が続いていたら、

もっと、

もっともっと、

美凪は俺を頼ってくれただろうか。

素直に気持ちを話してくれていただろうか。

黙って着いてくるだけじゃなくて、

俺の手を引くようなことがあっただろうか。