泣いて、凪いで、泣かないで。

「ゆづちゃん先食べてて。私、ゆっとのこと、ちょっと見てくる」

「じゃあ、遠慮なく」


私はゆづちゃんを置いて洗面所に向かった。

洗面所にはバケツと雑巾があるはずだからそれで濡れた玄関を拭くつもり。

トントントンとドアを叩くも返事はない。

シャワーでも浴び始めたのかもしれないと思い、そーっと開けて見てみると案の定そうだった。

キレイ好きなゆっとはきちんと服を畳んでかごに入れている。

なんて言ってるけど、よくよく考えたら見てはいけないものなんじゃないの?

私は急いでここから脱出しなくてはと、慌ててバケツと雑巾を探した。


「あれ?ない」


いつも洗面台のとなりに青いバケツが置いてあるのだが、なぜか今日はない。

ならば、雑巾だけでもと探すものの、なかなか見つからない。

一体どこに行ってしまったんだろう。

棚を開けて探そうかと思ったけど、ここは他人の家。

いくらほぼ毎日来ている幼なじみの家とはいえ、あまり詮索するのも良くないと思い、洗面所を出ようとした...その時だった。