3月9日。

桜の蕾が色付きはじめた頃…



今日、私たちは紅羽学園を卒業する。









「───…卒業生代表、黒瀬柊吾。」




「はい。」







卒業生代表として壇上に上がる柊吾。

〝王子〟の姿を目に焼き付けようと、先程まで眠たそうだったギャルたちも、じっとステージの方を見つめている。









「───…答辞。




野山に街に、段々と春の穏やかな温もりを感じられるようになって参りました。

春爛漫のうららかな今日という日に、私たちは紅羽学園を卒業します。」










柊吾の答辞を聞きながら、そっと瞳を閉じてみる。

この学校で過ごした思い出が、一気に脳裏に蘇るようだった。