だめ……離れなくちゃ…
頭ではそうわかっているのに、身体は思うように動かない。
「香純……
こんな時に言うのは、卑怯だけど……」
柊吾の低い声が、耳元で響いた。
「─────…好きだよ。」
静かに囁かれたその言葉に、胸が締め付けられるように痛んだ。
本当にずるい…卑怯だ…。
なんで今、そんなことを言うの…?
私はその言葉に頷くことも、首を横に振ることもできなくて…
ただひたすら、彼の腕の中で泣いた。
私を抱きしめる彼の腕は優しくて…
まるで、私に逃げ道を用意しているかのようだった。
だけど私は、彼の腕の中に留まった。
だって…胸が張り裂けそうなほど優しい彼の温もりを拒めるはずなんてなかったんだ。



