今までも、彼女に鋭い眼差しを向けられることは多々あった。
嫉妬や嫌悪に溢れたとても不愉快な眼差し。
だけど、今の彼女の視線は、私の知っているそれとはまるで違っていて…
何も感じとれない。
真っ黒で、何も映さない不気味な瞳。
その瞳から僅かに感じられる何かがあるとするならば…
…それは、〝憎悪〟だった。
一体、いつから……?
いつから彼女は私にあんな瞳を向けるようになった?
週に何度かは、朝バス停で彼女とも顔を合わせていたはずなのに…気が付かなかった。
いつの間にか、彼女の視線が気にしなくなっていた。
…いや、正確には〝気にならなくなっていた〟か…。
いつも私の隣には桜河がいて、私の視界をふさいでくれていたから。
桜河は、気づいていたのかな?
彼女の向ける視線の変化に。
胸に残るザワザワとした嫌な予感を誤魔化すように、私は走る速度を上げた。



