「…香純。」










彼の声が、広いプールに響いた。










「ん?」




「…キスしたい。」











雨音にかき消されそうな声。

…だけど、私の耳にははっきりと届いた。




少しだけ恥ずかしそうに私の胸元に顔を埋めるところとか…

私のTシャツを軽く握る仕草とか…







そのすべてが何だか可愛く思えて…






〝幸せにしたい〟


柄にもなくそんなことを思ったんだ。














「…私もしたい。」










私がそう言うと、桜河は一度腕の力を緩めて少しだけ体を離す。




だけど未だに私の腕は、彼の首に回されたままで…

必然的に、至近距離で彼と目が合う。