そして桃奈は、1冊のノートを取り出した。
「これ…川上のデータ…」
「…本当は私が持ってるの。」
突然部からなくなって、そして今も香純が必死で探しているであろうデータ。
そんなものを、なぜ桃奈が…
いや、そんなことよりも…
「…なんであの時、何も言わなかった?」
キャプテンが部員たちに向かって質問をした時、いくらでも言うチャンスはあったはず。
それにもかかわらず、桃奈は俺の横でたしかに「知らないです」と言った。
シンとした体育館で一人でデータを探す香純の姿を思うと、胸が締め付けられた。
黙り込む桃奈に、俺の怒りはふつふつと煮えたぎって…



