「…やだなー、柊くん。
私、まだ入部して2週間だよ?」
怖いくらい自然な笑みを浮かべて言う桃奈に、少しだけ背筋がゾッとした。
彼女は嘘をついていると直感的に感じた。
そして、これほどまでに自然な顔をして嘘をつく彼女が恐ろしかった。
「桃奈…。
もし嘘ついてるなら、俺はもう桃奈のことを信じられなくなる。」
「何言ってるの、柊くん。
私、本当に何も知らないよ。」
俺の言葉に、貼り付けた桃奈の笑顔が一瞬だけ歪んだのを見逃さなかった。
「…正直に話してくれたら、怒らないから。」
最後に一言だけそう言った。
すると桃奈は、全く自分の言うことを信じない俺に対して諦めたのか、バツの悪そうな顔でカバンの中を漁りはじめる。



