こんな時こそ、香純のそばにいて支えられるような男になりたい。
だけどいつも、香純は自分より他人を優先して…
〝大丈夫〟〝柊吾は休んでて〟と、全く俺を頼ってくれない。
それが俺には少し寂しくて…
「フッ……バカみたい。
いくら探したって見つかるわけないのに。」
隣を歩く桃奈から発せられた、独り言のようなとても小さな声。
車の音にかき消されそうなほどの声だったけど、俺の耳はしっかりとその声を拾った。
「桃奈…。
もしかして、何か知ってる?」
俺が桃奈の腕を掴んで尋ねると、彼女は驚いたような顔をしてから、不自然に目を泳がせた。
その彼女の様子を見て、俺は今回のデータの紛失と彼女の関係を確信する。



