「自分では気づいてないかもしれないけど…

あんたはいい奴だよ。本当に。」












…やめろ。


本当にいい奴なら、柊吾と一緒にいるお前を見て、イライラしたりなんてしない。

…心の底から、お前の幸せを願えるはずだ。











「桜河。いつもありがとう。」






「…やめろよ。」









満面の笑みでそう言う彼女。

その笑顔に、自分の中で何かが弾けたように感じた。








「…っ…くそが…!」




「…わっ!?」









俺は思わず彼女の華奢な腕を引き寄せて、自分の腕の中に収めていた。



力を込めるとすぐに折れてしまいそうな細い体を、できるだけ優しく…

だけど逃がさまいと、力強く抱き締めた。












「ちょっ!?……急にどうしたの?」










服越しに伝わる彼女の体温。

鼻をかすめるシャンプーの香り。








もう、限界だった。


気持ちを隠すのも、彼女の恋を応援する男を演じるのも…