俺たち二人の間にしばらく沈黙が続く。
それを破ったのは桜河だった。
「───…あいつ、昨日ずっと泣いてた。」
桜河のその言葉に、俺は何も返すことが出来なかった。
俺に裏切られて、傷ついて、泣いて…
その時誰よりも彼女の傍にいたのは、やっぱり桜河で…
香純を傷つけてしまったことに対する自己嫌悪と、桜河へのくだらない嫉妬心。
今はもう、嫉妬する資格すらないのに…
そんな自分勝手で情けない俺に、桜河はさらに言う。
「俺、言ったよな?
“香純を絶対に傷つけるな”って…」
「…うん。」
『強そうに見えて、全く強くねぇし…
むしろ脆いよ、こいつ。
…だから絶対に泣かすんじゃねーぞ。』
『…あぁ。』
あの夏の日、たしかに俺は桜河と約束した。
その約束さえも…



