咄嗟に香純に嘘をついたのは、桃奈の家庭の事情を簡単に話すわけにはいかないと思ったから。
…いや、本当はそんなのただの言い訳で…
桃奈の元へ行くことを香純に知られたくなかっただけなのかもしれない。
しかしその後詳しく話を聞くと、桃奈の母親が危篤だというのは彼女の嘘だった。
病院から着信があったのは本当だが、入院理由はただの盲腸。
桃奈は、俺と香純が一緒にいることを知っていて、あんな電話をよこしたんだ。
あんな電話さえなければ…
桃奈のせいで…
桃奈の顔を見る度に、彼女を責めたくなるけど…
…本当はわかっている。
香純が怒ったのは、“桃奈に会いに行ったこと”より、“嘘をついたこと”。
悪いのは俺だ。
だけど、8年越しの初恋をあんな形で終えて…
何かのせいにするしかなかった。
そうしないと、あまりにも辛いから…



