きみに ひとめぼれ


次は数学の授業だった。

もう逃げ出したかった。

授業に出てたって、こんな状態じゃ耳にも入らないし、どうせ聞いてたってわからない。

結局授業が終わるまで、私は何度も本田君と太田さんの顔を思い返していた。

修学旅行の帰りのバスで見た本田君。

いつものように笑って、カッコよくて、みんなに囲まれて。

その隣にいたのは……、ああ、太田さんだったかも。

不鮮明な記憶を手繰り寄せて、余計悲しくなった。

情けない気持ちになった。

太田さんは、女の子らしくて誰とでも仲がよくて、かわいらしい子だ。

私は話したこともないから、それはただのイメージなんだけど。

私も太田さんみたいに可愛くて甘え上手で素直だったら……

好きな人にも、あんなふうに話しかけられたら……

一目惚れなんてしなかったら……


こんなこと考えたって、どうしようもないのに。