きみに ひとめぼれ


どんっ、と急に前の座席が揺れて、意識が引き戻された。

一気に恥ずかしさが押し寄せてきて目をそらした。

心臓の動く速さは、もう限界を超えていた。

とりあえず襟をささっと整えてあげて、「はい、もう大丈夫」なんてそっけなく言って、私は自分の座席に座りなおした。

たったそれだけなのに、息が上がっていて、勝見君にバレないように大きく深呼吸をした。

それでも、胸の苦しさは変わらなかった。

吸っても吸っても、酸素は足りなかった。


あのまま私たちは、どうするつもりだったんだろう。

予測するだけで、顔が熱くなった。


__私のこと、どう思ってる?


教えてほしい、勝見君の心の中。

ちらりと横を見ると、勝見君は腕を組んで目を閉じていた。

なんで私だけこんなにドキドキしていて、なんで勝見君はいつも平気な顔してるんだろう。

なんでこんな時に寝てられるんだろう。

私の目線より少し高い位置にある勝見君の顔を、恨めしげに見た。

すぐそこには、勝見君の体がある。

捲くり上げた長袖のカッターシャツからのびる長い腕。

この腕が、私を抱きしめたんだ。

あの日のことを思い出して、ドキドキしてくる。

もう一度、なんて、あるのかな。

腕から肩に向かって視線を走らせた。

勝見君が醸し出している空気感が、じわじわとこちらに伝わってくる。


__触れたい。

  勝見君のぬくもりを、もう一度感じたい。
 
  この腕に、もう一度……