あの後勝見君は、私の体をゆっくりと離した。
そして「ごめん」と一言だけ残して、教室を出ていった。
そこに取り残された私は、動けずにいた。
心臓だけがはやく動いていた。
結局、あれから私たちは特に話をすることもなかった。
授業で当てられることもないし、生物室での授業もない。
一緒に勉強もしないから図書室にも行かない。
体育祭で勝見君が見事な走りを見せてくれたのに、「すごかったよ」の一言さえも言えないでいた。
ちゃんと見てたのに。
でも、この修学旅行の計画で班になって話し合う時だけその接点はあった。
ほとんど女子でわいわい話していることが多く、勝見君を含む男子は意見は言うものの、基本は黙っている。
勝見君は相変わらずにこにこしている。
時々たわいもない話をする。
でも全然気まずさや不自然さはない。
ごく普通のクラスメイト、同じ班の人。
何でもない顔をして京都の地図を見て、バスの時刻を調べて、笑ってる。
時々冗談を言ったりからかったりもしてくれる。
まるで、あの日のあの出来事がなかったかのように。
私にとってはとんでもないことが起こったというのに、勝見君は全然そんな感じではなさそうだった。


