ボールの行方を追いかけると、その先で、勝見君がこちらを向いて立っているのが目に入った。
みんなが勝見君に何かを言いながら、勝見君の背中をポンとたたいて持ち場に戻っていく。
だけど勝見君はそんなみんなにまるで気づいていないかのように、じっとこちらを見ていた。
私と視線が合うのを確認して、勝見君はゆっくりと両腕を高く上げた。
そしてその腕を、ふわり、ふわりと、大きく動かした。
なぜだろう。
その腕からは優しさしか伝わってこない。
愛おしさしか感じない。
見慣れた体操服が彼の体を柔らかく包んでいて、その体操服さえ羨ましいと思う。
私は何となく恥ずかしくて、手は振り返さず、小さく「うん、うん」と何度かうなずいた。
本当は、嬉しくてしょうがないくせに。
手を振り返したいくせに。
何か声をかけたいくせに。
勝見君は両手をストンと下ろした後も、満足げに目尻を下げて私を見つめていた。
空には雲一つなく、きれいな空色がどこまでも続いていた。


