きみに ひとめぼれ


少し経つとゲームが始まった。

ピッという鋭い音とともにみんなが散らばる。

ボールが転がり始めると、すぐに勝見君にボールが回された。

勝見君はそのボールをひょいひょいと運ぶ。

前や横からやってくる人たちを、にこにこしながら交わしていく。

ボールはすっかり勝見君の虜になって、離れようとしない。

勝見君は楽しそうだ。
 
ゴールの手前まで来て、勝見君が思いっきりボールをけり上げる。

ボールの行き先は、広瀬君の足元。

見事な正確さですとんと落ちる。

受け取った広瀬君は当たり前のようにゴールを決めた。

何度かそんな場面を目の当たりにする。

もちろんシュートを決めるのは広瀬君ばかりではないんだけど、勝見君はゴールの手前まで運んで、シュートを決められそうな人を的確に見定めてボールを送り、自分は決してシュートを打たなかった。


__そうか、それでいいのか、勝見君は。



誰かがゴールを決めても、そのあとには満足げな顔をして元の場所に戻る。

シュートが決まらなくても、「ドンマイ」なんて笑いながら走っている。

そんな勝見君を見ていると、まあいいか、とため息が出た。

でも、私もそれで満足だった。

だって、勝見君は楽しそうだったから。

そしてサッカーをしている勝見君を見るも、楽しい。