約束通り、勝見君は図書室で待っていてくれた。
今日も椅子に横に腰かけて、足を組んで頬杖をついて本をぺらぺらとめくっていた。
その姿に、やっぱり見とれてしまった。
勝見君は私に気が付くと「よっ」と言って本を置いた。
私もその声を合図に我に返る。
「ごめんね、待った?」
「大丈夫、大丈夫」
その言葉に引き寄せられるように勝見君の隣の席に座った。
勝見君は今日も丁寧に私に教えてくれた。
勝見君は言葉で説明しながら、さらさらとシャープペンを動かしていく。
すらすらと解いていく勝見君の声や手の動きは、まるで魔法を使っているようだった。
記号や数字、放物線や座標がノートの上につらつらと記されていく。
その動きがなんとも不思議だった。
声の調子と手を動かす速さが合っていて、聞いてて心地よく、頭の中まで整理されていく。
この教科書もノートもシャープペンも問題さえも、すべて勝見君に操られているように見える。
私の頭に、ポーンと放物線を描くサッカーボールが思い浮かんだ。


