きみに ひとめぼれ


今日最後の授業は生物だ。

それは急遽、生物室での授業になった。

慌てて生物室に向かうけど、足取りは重かった。

同じ机に勝見君がいて、さらに席は向かいなんだから。


勝見君にもきっと聞こえてたよね。

どんな顔して向かい合えばいいんだろう。

気まずい。

あれ? そもそも何で気まずい?

だって、私たちはそんな仲でもないんだから。

自意識過剰にもほどがある。

でも悲しいのは、あんなことが勝見君に知られてしまって、勝見君とはもう、どんな関係にもなれないと思うからだ。

私の中ではもう終わった話とは言え、勝見君にとってはそうではない。

自分の他に好きな人の存在がちらちらしているのは、誰だって面白くない。



__ああ……、そもそも勝見君は、私のことなんて何とも思ってないか。



はーっと何度目かのため息をつきながら生物室に向かった。

慣れない場所で授業をするのは気持ちがいつも落ち着かない。

グループで作業する用の大きな机に、ただの箱のように見える椅子。

教室とは空気や匂いも違うし、窓から見える景色も違う。

高さの合わない机と椅子に違和感を覚えて、気持ちを落ち着かせるように、机を手で何度もさすったり座りなおしたりした。

そうやってそわそわした時間を過ごし、始業のチャイムが鳴ると同時に、対面に慌てて座る人がいた。

勝見君だった。

はあ、はあと息を切らす勝見君を私はちらりと見た。

勝見君はカッターシャツの襟元をふわふわとさていた。

その隙間から、首より下の普段は隠されている部分がちらりと垣間見えてドキッとした。

一瞬目が合ったけど、すぐにそらした。