「何度思い出してもため息が出るよね。
ほんとに告白するなんて私も思わなかったからびっくりしたし。
でもいい場面に居合わせたよ。
人の告白なんてなかなか見れないし」
加奈子はころころと豊かに表情を変えながら話していく。
それとは対照的に私の表情は固まったままだ。
「しかも本田君でしょ?
あかりは相変わらず面食いだよね」
「そ、そう、だね」
固まった表情と体から振り絞るように出せる言葉はそれくらいだった。
本当はもっと、言わなきゃいけない事があるはずなのに。
「で、どうなの? 長い夏休みの間に吹っ切れたの?」
加奈子が心配そうな顔をして私の顔を覗き込んでくる。
本当に心配そうな顔をしているんだけど、時々、この顔は仮面なんじゃないかと思う。
そして、一層声を大きくして加奈子は言った。
「あかりはフラれても引きずるタイプだもんねー。
中学の時に好きだった人だって、なかなか吹っ切れなかったしね。
あの人も、本田君みたいなイケメンだったしタイプも何となく似てるかも。
だから友達として、ほんと心配なんだよね」
こんなに本音を疑ってしまう友人はいない。
「あ、ありがとう。でも、もう大丈夫だから」
「ほんと? 何かあったらいつでも相談乗るし。
忘れられない気持ちもわかるからさ」
始業のチャイムが鳴り始めると、「じゃあね」と言って去っていった。
はーっと大きすぎるため息をつくと、こわばっていた体もようやくほぐれていく。
それでも、私の心の中はそわそわとして落ち着かなかった。
そっと視線を目的の方向に動かすと、勝見君と目が合った。
勝見君は険しい顔でこちらを見ていた。
なんだかすごく睨まれている気がして、すぐに目をそらした。


