きみに ひとめぼれ


勝見君とちゃんと話したのは、あの日が初めてだった。

なんだか不思議だった。

私はたぶん、「好きな人」と話すのは初めてだった。

いつもはすでに「好き」から始まってて、だから意識しすぎて話すことも近づくこともなく終わっている。

だから、勝見君と自然と話せたのが不思議だった。


だからと言って、その後すごく仲良くなったわけでもないし、日常的に話すこともなかった。

勉強を教えてもらったのもその1回きり。

こちらとしては何かきっかけでもないかと探してみる。

だけど特にない。

また宿題を当てられでもしたら口実を作れるんだろうけど、そう何度も当てられてはたまったものではないし、そのたびに勝見君に教えてとお願いしに行くのもなんだかおかしい。

ちらちらと勝見君を目で追うけれど、たまに目が合ってもすぐそらしてしまう。

手を振ったり、にこっとしたりした方がいいのかな。


そんなことを考えながら、今年から同じクラスになって仲良くなった由美と話していると、「あかりー」と呼ぶ大きな声に体がびくりとなった。

中学からの同級生の加奈子だった。