きみに ひとめぼれ


勝見君は私に丁寧に教えてくれた。

わからないところはいくつもあった。

正直何がわからないかもわからない状態だった。

だけど、勝見君はちゃんとそんなところにも気づいてくれた。

すべての説明が終わると、勝見君は「自分なりの言葉で説明しながら解いてみて」、と私に指示を出す。

もちろん全然自信はないんだけど、勝見君はじっとそのつたない説明を聞いててくれた。

「うん、うん」ってずっと優しく相槌をうつ。

「う、うん」と時々苦笑いをする。

苦戦しながらも説明しきって勝見君を見ると、緩やかに目尻を下げて私をじっと見ていた。

目が合って、ドキドキしてしまう。

思わず目をそらした。


「どうだった?」


小さな声で聞いた。

何も言わないので、ちらりと覗き込んだ。


「……面白すぎ。必死感がすごい」

「え?」

「余裕なさすぎでしょ」


先ほどまでのドキドキが嘘のように吹っ飛んだ。

勝見君は「ははは」と笑って私をからかう。


「もう、こっちは真剣なんだからね」

「見てたらわかる」


恥ずかしいけど、なんだか楽しい。

良い時間と空気が流れている。
 
勉強もわかったし、当てられた問題もなんとかなったし、満足だと息をふーっと吐くと、


「よくできました」



そう言って、勝見君は静かに目尻を下げて笑った。