きみに ひとめぼれ


教室にはもう掃除当番の人はいなくて、残ってしゃべっている人や勉強をする人が数人いるだけだった。

ゴミ箱をもとの場所に戻して、鞄をもって全速力で図書室へ向かった。

図書室には人がほとんどいなくてしんと静まり返っている。

図書当番の生徒が二人いるだけだ。

私もほとんど図書室に来たことがないから、なんだか新鮮だった。

図書室の空気も、本が並ぶ光景も、自分が通っている学校なのに、私の知らない世界だった。

見慣れない雑誌や新聞、威圧感のすごい大きな事典。

部屋の中央に並ぶ机は、グループ学習用につなげた机と、個人で利用できる机とに分かれていた。

勝見君はグループ学習用の机にいた。

長い足を組んで椅子に横向きに座っている。

頬杖をついてぺらぺらと本をめくっていた。


 勝見君は図書室が似合う。


 すごく意外だった。


勝見君の成績がいいのは最近知った。

でも図書室とか来なさそうだから。

だけどこの場所は、彼を一層知的に見せた。

本に目を落とすその姿にしばらく見とれていた。

ふっと勝見君の視線がこちらに向けられて、私は動き出した。