きみに ひとめぼれ


授業が終わっても坂井さんはぼんやりしている。

岡田さんに話しかけられても、困ったように笑って、岡田さんが帰っていくのを小さく手を振って見送っていた。

一瞬だけど、岡田さんと目が合ったような気がした。

坂井さんは机に置いた鞄に顔を預けたまま動けないでいる。

今から掃除が始まるというのに、坂井さんはそのままだった。

その姿がたまらなくつらかった。


放っておけない。

俺でなんとかできるなら。

なんとかって、何ができるんだろう。

自惚れるなよ。

彼氏でもないくせに。

 
どこかでそんな風に笑う自分がいる。

だけど今は、彼女のそばにいてあげたかった。

せめて、友達として。

友達……なのだろうか。