きみに ひとめぼれ


とりあえず彼女の隣に腰を落ち着けたんだけど、特に会話もない。

俺は落ち着きなくスマホを手にしていた。

特に何か見るわけでもなく。


しばらくすると岡田さんたちもバスに乗り込んだ。

そのあとすぐに後ろから声をかけられた。


「ねえ勝見君、写真送るから連絡先教えて」

「ああ、うん、ありがとう」


驚いた。

女子に連絡先を聞かれるなんて初めてだった。

まあ、写真を送るという名目だから、気持ちとしては複雑なんだけど。


岡田さんと連絡先を交換する。

その流れで坂井さんとも連絡先を交換できないか? 

どさくさに紛れて聞いてみようか。

俺が心の準備をしていると、早速メッセージが届く。

岡田さんはグループを作ってそれに招待してくれた。

俺が承認すると、そのあとから坂井さんもメンバーに追加された。

思わぬ形で坂井さんの連絡先を知ることになった。

それから大量の写真が送られてきた。

思い出を振り返るように写真に目を落とした。


坂井さんが笑っている。

そして、そこに自分も写っているのが不思議だった。

大量の写真を一枚一枚スライドして見ていくと、ふと、ある写真で指を止めた。

自然と頬が緩む。
 
俺と坂井さんが二人で話す姿が、隠し撮りのように収められていた。

この旅行中にこんな瞬間があったことが嬉しかった。



俺たちは、こんな風に写るのか。



坂井さんは、俺のこと、どう思っているんだろう。



ちらりと彼女を見ると、彼女もスマホをゆっくりとスライドしていた。

口元が緩んでいて、楽しかったことが伝わってきた。