きみに ひとめぼれ


京都はやっぱり楽しかった。

女子の要望に振り回されるだけのつまらない旅行になるかと思いきや、そうでもなかった。

そう思っていた俺が楽しいと感じたのだから、計画を立てた当の女子たちはさぞかし楽しかっただろう。

なんとか旅程をこなそうと必死になる。

思い出の写真を撮りまくる。

京都のスイーツを撮りまくるし食べまくる。

お土産屋に片っ端から入って好きなものを買う。

女子たちは、ほんの些細なことにも目を輝かせた。

その中に坂井さんがいて、その近くにいられることが嬉しかった。


「ねえねえ、勝見君」


と、俺の二の腕辺りを興奮気味にパタパタと何度も叩くんだけど、その行動はあまりにも無防備すぎた。

だけど体に伝わるその無邪気な衝撃も、名前を呼ぶ声も、俺にはすべて心地よかった。

視線は、まあ、美味しそうなスイーツやかわいいお土産品に注がれてるんだけど。


「んー、これおいひぃ」


と試食用の黒ゴマ味の生八つ橋を、目を細めてほおばる彼女は、感動的な可愛さだった。

少しでも顔が曇れば、休ませる。

お土産を買ったらその袋を持つ。

求められなくてもシャッターを押す。

ちょっとしたおやつならおごる。


デートをしているみたいだった。

彼氏になった気分だった。

いや、もう他の男子と同じ眼差しでもいい。

その眼差しをこちらに向けてくれるのなら、どちらでも幸せだった。