きみに ひとめぼれ


修学旅行当日は、バスもグループで固まって乗り合わせる。

男子同士、女子同士で座ろうと思うと、三対三なので、自ずと一人ずつ余る。

べつに男女で座ればいいんだけど、どういう流れからか一組は男女で座ることになった。

その席は、公平にじゃんけんで決めた。

京都へ出発する日は、俺が女子と座ることになった。

坂井さんではない。

岡田さんという、クラスでは割と目立つ感じの女子だ。

目立つというのは身なりとか出しゃばったりとかそんな感じではなく、結構美人でスタイルもよくて、若干話しかけにくいんだけど、いわゆるクールビューティーとして多くの男子から密かに人気を集めている。

そんな女子と隣同士になってどうしようと思ったけど、岡田さんは見かけによらず気さくに話してくれた。

それにグループで計画を立てていたからか、話しやすかった。

意外と会話が弾んで、途中のサービスエリアまでの一時間、俺は岡田さんと見事にしゃべり通した。

途中休憩が終わって席に戻ると、岡田さんは近くの席の女子と話していた。

そしてそのままバスは出発した。

俺はふーっと密かに息を吐いた。

普段女子と話さないからか、これだけずっと話しているとさすがに疲れる。

計画していた時から気づいてはいたけど、女子はほんとに、よくしゃべる。

窓枠に頭を預けて、ぐんぐん流れていく景色を眺めた。

次に目を開けた時には、御所の長い塀が流れていた。

時々立派な門が見えて歴史を感じる。

さすが京都だ。

坂井さんも、この景色を見ているだろうか。

寝起きのぼんやりした頭で、俺は前の座席に思いを馳せた。


窓と座席の隙間から、チラチラとセーラー服が見えた。