きみに ひとめぼれ


そんな大型イベントが終わると、いよいよ修学旅行だ。

修学旅行は俺にとって高校三年間で最大のイベントだと思っている。

年に一回ある体育祭や文化祭より、三年間で一度きりの修学旅行は一大イベントだ。

行き先は京都。

制服着用は窮屈だけど、だらだらと京都の町をぶらつけるのだ。


修学旅行は男子三人、女子三人の班行動で、そのスケジュールも基本的にグループごとに決める。

そうはいっても、やはり計画の主導権は女子だった。

そのスケジュールは女子たちによってパンパンに詰め込まれた。

男子は各々意見を言うけれど、女子のパワーには負ける。

そのパワーの中に、坂井さんも含まれている。

話し合いの合間に、他のグループに目をやった。

クラスでも目立つ男子たちのいるグループはすごく盛り上がっていて、騒がしい男子の中で女子は楽しそうに笑っていた。

あんなふうに盛り上げて、女子を引っ張っていける男子だったら……。

そんなことを思ってはみるんだけど、盛り上げられなくても、引っ張っていけなくても、このグループの女子たちは楽しそうだった。

坂井さんも笑っていて気持ちがいい。


笑っている顔。

うきうきした声。

紙に埋め尽くされていく計画の文字。

それを見ているだけで満足だった。

俺も淡々と班行動の日程を決めていくんだけど、表面上は楽しんでいても、内心は全然落ち着かなかった。


彼女はあの日のことをすっかり忘れてしまったかのように俺と接した。

ただの、同じグループの男子として。