きみに ひとめぼれ


二学期は体育祭や文化祭といった大型イベントもあるけど、そういうのは目立って華やかな生徒が主役になる。

人前に立って派手なことをするタイプではない俺みたいな生徒は、その準備に走るだけ。

ただ、体育祭の対抗リレーだけは、俺も出ることになった。

こちらは毎年体力テストの結果で選出されるので、選ばれたからには走るしかないのだ。

一年の時も走ったけど、俺が走ることで劇的にその場が盛り上がることはない。

抜かすことも抜かされることもなく、グラウンドを一周して次の人にバトンを渡す。

本当につなぐためだけの人。

本田や広瀬が走るのとはわけが違うのだ。

ただ今年はちょっと状況が違った。

坂井さんがいたから。

その存在だけで、自分の力以上の力が出るなんて、思いもしなかったし、知らなかった。

走っているときの記憶なんて全然ない。

気づいたら、グラウンドの中央でありえないくらい息を切らして倒れこんでいた。

大の字になって寝転んでゆっくりと目を開けると、空は澄み切って、きれいな空色をしていた。