きみに ひとめぼれ


あの後も、彼女はずっと教室の窓からグラウンドを見下ろしていた。

俺はそれが嬉しくて、いつもより練習を張り切っていた。

でも彼女の言う通り、一度もシュートを打つことはなかった。

いつも通りドリブルをして、パスを出して、ゴールネットからころころと離れていくボールを拾いに行った。

いつもと違うのは、その繰り返しの最後に、教室を見上げることだった。

彼女の言うことは納得したけど、どうしてと言われても困る。

だって……


「それが俺の仕事だから、かな。
 
 ボール運んで相手を蹴散らして、一番確実に点を決められそうなやつにパスを送る。

 で、試合を盛り上げてもらう。

 チームプレーってやつだよ」


「でも、自分でシュートしたいなって思わないの?

 シュート決まると気持ちよさそうだし」


「確かにそうかもしれないんだけど……

 俺は華やかにシュートを決めて盛り上げるっていうタイプじゃないから。

 どこにだって花形と裏方っているじゃん。

 俺は花形っていうより裏方って感じだし」


彼女は俺の説明に納得していないようだ。

その証拠に大袈裟に首をかしげている。

その恰好が、かわいらしくて、おかしかった。


「俺はそういうのが好きだから、良いんだよ。

 なんていうか、空気みたいな」
 

本当のことだった。

だから別に弁解しているつもりもない。

確かにシュートを決めたり、その後みんなに喜んでもらえたり、会場がわっとなるのは気持ちよさそうだけど、俺は今のままで十分満足しているし、気分は悪くない。
 
だけど彼女からは「ふーん」とやっぱり納得のいかない返事が返ってくる。


「じゃあ、勝見君のシュートは一生見れないんだね」


図書室のクーラーから流れてくる微かな風が、彼女の髪をふわふわと弄ぶ。


「見てみたいな」


彼女は視線を上げて図書室の広い天井を見上げた。

その目で何を描いているのだろう。

その横顔は、すごくきれいだった。