きみに ひとめぼれ


俺が席に着くと、坂井さんの体が一瞬びくっとなった。

目が合うと、彼女はすぐに目をそらした。

目が合って不意にそらしたというより、目を合わせないようにしているのがわかって内心ショックだった。


生物室での授業は顕微鏡で植物の葉脈や茎の断面を観察する内容だった。

また観察だ。

生物という科目はなぜこうも観察を好み、絵を描かせたがるんだろう。

ただ、顕微鏡は俺たち男子のかっこうのおもちゃだった。

植物以外にも、授業と関係ないものを何かと見つけてはのぞき込んで興奮していた。

その合間にちらりと盗み見る坂井さんは、視線を下げてやはり俺と目を合わせないようにしていた。

それどころかこの至近距離でさらに距離をとろうともしていた。

顕微鏡を交代で見るタイミングがかぶろうものなら、わかりやすくそのタイミングをずらす。

少しでも触れそうになると、ささっと移動する。

まるで俺から逃げるかのように。


なんだか、気まずい空気。


そもそもなぜ気まずくなるのだろう。

だって、俺たちの間にははじめから何もないんだから。

シャープペンをくるくる回しながら書きかけのプリントに目を落とす。

時々花瓶に刺さった植物の方に目をやると、どうしても坂井さんの姿が目に入る。

偶然目が合うと、また慌てて視線をそらされる。

そんな坂井さんの姿に、だんだん苛立ってくる。