きみに ひとめぼれ


まぶしい日差しに澄んだ空気。

すがすがしい登校時間だった。


「よお、園田ー」


今日も渾身の力であいつは僕の背中をたたいた。

ほとんど吹っ飛びそうな勢いで僕はつんのめった。


「いってえな。手加減しろよ」

「早く行こうぜ、朝練遅れるぞ」


あいつは機嫌がよさそうだった。


「昨日とは別人だな」

「そうか? 一晩寝れば、人間はこんなもんだろ」


よくわからないけど、僕はそんなもんでもない。

人間ではないのだろうか。


とにかく、あいつはすがすがしい表情をしたまま、まっすぐ前を向いて歩いた。

その隣を、僕もいつも通り歩いた。

僕よりほんの少し高い背丈、リズムよく刻まれる歩調。

いつもの朝に、いつもの足並み。

いつも通りなのに、今日はなんだか安心感があった。

僕の隣を歩くのが男子だからか、それとも、あいつだからか。


「なあ園田」


突然あいつに呼び止められた。


「おれ、本当に告ってもいいのかな?」


その言葉に、一瞬胸のあたりがズキンとなる。


ちらりと横を見ると、あいつはやはりまっすぐ前を向いたままこちらを見ようとはしなかった。

あいつの視線の行き先を追いかけた。

そこには、坂井さんがいた。

僕たちのほんの数メートル先を、彼女は一人で歩いていた。

あいつに視線を戻すと、もう彼女から視線を外す気はないようだ。


どんな答えを求めているんだろう、この僕に。

あいつは隣で歩調を合わせながら、僕が答えるのをじっと待っていた。