この物語はフィクションです

あれはもう、狂子だ。正真正銘、狂子だ。


立ち上がった狂子が歩き出すと、カメラがひとりでに動いて別の場所を映す。


跳び箱の陰に隠れていたのは、凛香だ。


狂子は、凛香の髪を掴んで引きずり出し、叩きつけるように突き飛ばす。


「きゃあっ!」


床に転げた凛香はそれでも必死に後ずさりしようとしたが、そこへ狂子が馬乗りになり、高く掲げた包丁を一気に振り下ろした。


ざくりと、包丁の刃が凛香の腹部に突き刺さる。


白いカッターシャツに、じわりと赤い血が滲んだ。


痛みと恐怖に顔を歪めた凛香が、腹部を庇おうと両手で覆った。


けれど、勢いよく引き抜かれた包丁が間髪入れずに振り下ろされる。


再び腹部を刺された凛香は大声で叫んだ。


「いやああああああああああああああっ!」


スマホのスピーカーから断末魔の叫び声が聞こえてきたと同時に、校内にも断末魔の叫び声が響き渡る。あれは凛香の声だ。


「……嘘でしょ? 何かの間違いか……冗談だよね?」