この物語はフィクションです

走る、走る……廊下を抜けて、階段を下りて。校舎の端にある扉を開けて外へ出ると、体育館へ向かうスロープを駆け抜けた。


一時間目の始業のチャイムが校内に鳴り響いても、気にせず体育館の中へ入る。


この時間は授業で使われていないのか、体育館に人の気配はない。


ただ、倉庫の方から物音が聞こえてくる。


「美桜? そこにいるの?」


板張りのフロアを抜けて、体育倉庫の前まで来た。


私は、金属扉を開けて中を覗き込む。


薄暗い倉庫の中を照らしているのは、小さな格子の窓から注ぐ陽の光だけ。照明は切れてしまっているのか、電源を入れても明るくならなかった。


――よりによって、こんな場所に隠れるなんて……。


「美桜、どこにいるの? いるなら返事して?」


倉庫の中へ足を踏み入れた瞬間に、首筋のあたりにひやっと冷たいものが触れる。


「きゃあっ!」


悲鳴を上げ私は、首筋を抑えて振り返った。途端に――バンっと物凄い音がする。


扉がひとりでに閉まっていた。


――何、これ……どういうこと……。


扉を開けようとしたけれど、何故かびくともしない。


「ねえ、誰かいるの? なんで閉めるの?」


呼びかけても返事はなくて、両手で扉を叩いてみる。何度も、何度も、そうしているうちに私はへたっと床に座り込んでいた。