この物語はフィクションです

帰宅した私は、すぐさま凛香に電話をかける。


――プルルルル……と、呼び出し音が三度鳴った後で留守電に切り替わる。


何度かけ直しても同じだ。


「どうして出ないの……」


焦って手が滑りそう。何度かスマホを落としそうになりながら、凛香にメッセージを送った。


『さっき、学校の帰りに変なの見たんだけど?』


私は、今朝の美桜の話を思い出す。


まさかとは思うけれど、あれが美桜の見た狂子だったのだろうか。


――いいや、狂子なんていない。絶対にいないんだ。


それを確かめたくて、もう一度凛香にメッセージを送る。


『狂子って作り話だよね? まさか、元になる話とかあった?』


いつもならすぐに返信が来るのに、今日に限って既読すら付かない。


――凛香、何してるの?


待ちきれずに苛立ちを覚えた私は、SNSを確認してみる。


最初の投稿から一週間以上たっているが、いまだにいいねやRTは増え続けている。


私のスマホからでは確認できないけれど、きっとDMもたくさん来ているだろう。


みんな狂子に夢中だ。


――狂子は偽物のはずなのに。


話はどんどん膨らんで、まるで生きているみたいに勝手に動き回っている。


狂子って、何なの?


自分も作るのを手伝ったのに、狂子のことがわからない。


「凛香……なんで既読にならないの……」


メッセージの返信を待って、眠れぬ夜を過ごした。