この物語はフィクションです

――嘘だ、そんなわけない。


「何言ってるの、美桜」


何度も言うけれど、あれは私と凛香が作った都市伝説だ。狂子なんているはずない。


「下校しようと思ったら自転車がパンクしてて。家まで歩いて帰ったんだけど、誰かに後をつけられてる気がして。振り返ったら、いたの」


真っ青な顔をして怯える美桜を前に困惑した私は、後から登校してきた凛香に駆け寄る。


「……凛香が美桜を驚かせたの?」


小声でそう尋ねると、凛香は首を横に振る。


「私は何もしてないよ」


――それじゃあ、美桜は何を見たの? 


美桜の元に戻った私は、そっと声をかける。


「後をつけてたのは、本当に狂子だったの?」


「本当だよ。電柱の陰からこっちを見てた。私、怖くて。走って逃げようとしたんだけど、どんどん近づいてきて。慌てて家に駆けこんだから、そのあとはどうなったかわからないけど」


確かにそれは、私と凛香が作った狂子に似ている。


「絶対あれは狂子だった! 間違いないよ!」


「美桜、落ち着いて」


美桜は、両手で顔を覆う。