この物語はフィクションです

胸のあたりがチクリと痛む。


「凛香、これって大丈夫かな?」


「何が?」


凛香はケロッとした顔をしているけれど。


「だって、偽物なんだよ? 嘘をネットでどんどん広めちゃってもいいのかな?」


もしかしたら悪いことをしているのではないかと、今になって少し怖くなった。


「偽物って言い方、嫌だな。フィクションだよ、フィクション」


「フィクションって、どのみち作り話でしょ。それって、実在しないってことだよ」


気弱な発言をする私に凛香が詰め寄る。


「いいんじゃないの。誰も本物とか偽物とか、実在してるかどうかなんて気にしてないよ」


「凛香、声が大きい……」


周囲を気にしてあたふたする私に、凛香が言う。


「信じた人がいるってことはもうね、これは本物だよ! もしかしたら本当に狂子はいるかもしれないよ!」


驚いた私は大きく目を見開く。


「凛香ってば、何言いだすの」


――あれは、私と凛香が作った偽物の都市伝説なのに。


狂子が存在するなんて、絶対にありえない。