今日はお兄ちゃんの誕生日。母を無くした私達はお父さんが残したボロ家で何とか生きていけている。お兄ちゃんはいつもの朝のルーティーンを
慣れたようにこなしている。

まず朝ご飯を作り、窓をばっと開けながら大声で私を起こす。
駄々を捏ねて起きない時は擽られて私は笑いながら起きる。幸せな日々だなぁと改めて思う。

こんな生活がずっと続く、
いや、続いて欲しい____

私は確実に幸せを感じていた。確かに両親がいたらもっと幸せだったのだろうが。
否。そんな事はもう考える必要が無い。考えても辛いだけだ。

母が死んだ日のことは全体的にあまり思い出したくない所だけれど…今日は1年で特別な日なので振り返るとしよう。

母は笑顔の絶えぬ人だった。まさにお兄ちゃんのようだ。否、違うな。お兄ちゃんが母に似ているのだ。
親の血が流れているなあと、お兄ちゃんの笑顔を見る度よく母を思い出す。

あの日は丁度地域で開催される”太鼓踊楽”という日でその名の通り太鼓を近所の力のあるお兄さん達が鳴らし続けながらこの地独特の太鼓音頭というものを踊る日だった。私たちは地域には入っているけれど、少し離れていて、3.4軒くらい固まっている中の1つだった。少し地域の家が多い所とは違い、山が1番近い。近くには川もあって、夏はお兄ちゃんとよく遊んでいる。母は体が弱いため今年もお兄ちゃんと一緒に毎年太鼓の音を家で聞いていた。