「‥‥‥ごめん。俺、桜のことなんにも気づいてやれなくて」
「ううん」
と桜はゆっくりと首を横に振った。
「気づかないもなにも当然だよ。私だって、ばれないように必死で隠してたんだから」
と桜は笑った。
「でも、この気持ちは今日で“さよなら”するよ。これからは、新しい人生を歩くために」
‥‥‥新しい人生。
それは、きっと、さっきの男。
雫井のことだろう。
「私ね、引っ越して良かったと今では思うんだ。だって、私のことを“好き”と言ってくれる人に出会えたから。私だけを見てくれる特別な人に」
そう明るく話す桜。
あの頃、チビだった桜が今ではとても大人びて見えた。
「桜は今、幸せか?」
そう尋ねると‥‥‥
「うん! とっても幸せだよ」
そう答える桜の表情は、とても晴れやかで素敵な笑顔を浮かべていた。
ほんと、見るからに幸せそうな笑顔だった。



