「とぼけないでよ!」
頭の上に乗っている彼の手をどかすも、次の瞬間には彼に手首を掴まれた。
「ちょ、なにするの?」
「ほんと、手まで小さいんだな」
「あ〜! また、私のことからかったでしょ!?」
「からかってねーよ! 小さくて可愛いって言ってんの」
「えっ‥‥‥?」
い、今、“可愛い”って雫井くんが言った?
見た目は、クールそうに見える雫井くんが?
思いがけない言葉に、口をポカンと開けてフリーズしていると‥‥‥
「ほら、ぼーっとしてないで帰るぞ」
と、少し強引に彼に手を引かれて、ベランダから教室の中へと入る。
机の上に置きっぱなしにしていたバッグを渡してくれたのだけど、全然こっち向いてくれないし‥‥‥
「ちょっと待ってよ! 雫井くん、速い!」
彼の歩くスピードについていくのに必死だ。
かと思えば、雫井くんが急に立ち止まった。
ドンッと思いっきり彼の背中に顔をぶつけてしまう。
「っ痛い‥‥‥。急に立ち止まらないでよ、雫井くん」
空いている手で鼻を摩ると、ゆっくりと彼が振り返った。



