切ないほど、愛おしい

プププ、プププ、プププ。
静かだった病棟センターにけたたましく鳴った救急からのコール。

熱があることがバレてしまい検温させられていた私も、体温計を挟んだまま思わず立ち上がった。

この電話が鳴るのは緊急の患者が出たとき。
スタッフはみんなわかっているから、一斉に息を飲む。

「はい、はい。わかりました」
部長の声もいつもより緊張している。

どうやら切迫した状況のようだ。

みんなが注目する中、電話を切った部長が、
「32週の妊婦。交通外傷で意識なし。10分後到着」
言い終わった瞬間、

「「はい」」
一斉にみんなが動き出した。

32週ならまだ産み月には早い。
出来ることならもう少しお腹の中に残してあげたいけれど、母体が意識不明となればそんなことも言っていられないだろ。
緊急のお産になるかも知れない。

私も行かなくちゃ。
そう思って動き出そうとしたとき、

「君はダメだよ」
山神先生に止められた。

「でも、緊急の患者が」
「それでも、行かせない」
ガッチリと腕をとられてしまった。