切ないほど、愛おしい

「うぅーん」
私を丸椅子に座らせ、ジッと顔を見ながら山神先生が唸っている。

少し離れた位置から雪菜ちゃんも様子を見ているし、他のスタッフ達も遠巻きにこちらを気にしている。

「正直に言って。いつから具合が悪かったの?」

真っ直ぐに目を見ながら聞いてくる山神先生は、表情こそ穏やかだけれど間違いなく怒っている。

「別に」
どこも悪くはありませんと言おうとしたのに、

「乃恵ちゃんっ」
先生に遮られた。

24にもなって『乃恵ちゃん』はないと思う。
小児科の先生なんだからしかたがないのかも知れないけれど、いつもでも子供扱いなんだから。

「深呼吸して」
いつの間にか聴診器を取り出し白衣の上から聴診をしだした山神先生。

イヤだなあと思いながら、しかたなく深呼吸を繰り返す。
私の体に手を当て胸の音を聞けば、先生にはわかってしまうはず。
でも、ここまで来てはどうにも出来ない。

「熱は?」
「・・・」

「今日や昨日からの体調不良じゃないよね」
「・・・」
やっぱり誤魔化せないかあ。

「無理をすれば悪くなるだけだって、知っているよね」
「はい」.

「もう少し自分を大事にしなさい」
普段滅多に声を荒げない山神先生が怒っている。

あーあ、最悪の展開。
きっとこの後血液検査とレントゲンって言い出すに決まっている。
せっかくここまで頑張ったのに・・・

ガックリと肩を落としてしまった私の横で、先生が検査のオーダーを始めていた。