切ないほど、愛おしい

いきなり投げかけられた少々乱暴な声に、私は無表情で振り返った。

そこにいたのは若い男性。
年齢は・・・二十歳くらいだろうか。
金髪で、無駄に整えられた眉。
着ているのは作業服で、所々にペンキの跡も見える。

そして、男性の視線は真っ直ぐに私に向けらえていた。

えっと・・・
どこかで会ったかな?

少なくとも知り合いにはいないはず。
これでも私、記憶力は良い方だから、知り合いなら忘れるはずはない。

「あんた、俺の子をどうしてくれるんだよっ」
男性は、私に向かって声を荒げた。

「・・・」
身に覚えのない私としては「どうしてくれるんだ」と言われても、困ってしまう。

「あんたのせいで、あんたのせいで・・・俺の子供が死んじまったじゃないか」
今度は涙を流す男性。

え、ええええ。
子供が死んだ?
私のせいで?
何で?

すでに私の頭の中はハテナで一杯。

その上、周囲の人たちからは一体何が起きたんだと、好奇な視線を浴びせられる。

そりゃあね、いくら救急外来の待合だと言っても男性の声は大きすぎてかなり目立っているし、子供が死んだなんて簡単に口にできる言葉じゃない。

「あの・・・私」
どこかでお会いしましたっけ?

そう尋ねようとした時、

「ご主人、どうか落ち着いてください」
救急外来の診察室から白衣を着た女性が出てきた。